自分でできる認知行動療法 ー 認知のゆがみを治す ー
ここからは「自分でできる認知行動療法」について解説します。
この方法は、うつを克服していくために、自分の歪んだ認知に気づくために考えたものです。
1 事実と感情を分別する日記を書く
認知の歪みを変えるためには、まずは自分自身に認知の歪みがあることを知ることです。
認知の歪みを知るためには、出来事・事実に対する自分の感情を評価することからはじめていきます。
まずノートを準備してください。これから1日1ページ毎晩日記を書きます。
日記に書く内容は以下の4項目です。
・事実・出来事
・感情、気持ち
・気づき・意見(フィードバック)
・明日への改善(チャレンジ)
例:事実と感情を分別する日記のフォーマット
実際の日記のフォーマットは以下の通りになります。
日付
【1.事実・出来事】
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【2.感情・気持ち】
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【3.気づき・意見】
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【4.明日への改善】
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例:事実と感情を分別する日記の書き方
以下が書き方のサンプルです。
日付 5/10
【1.事実・出来事】
1.仕事でミスをした
2.上司に怒られた
3.彼女と喧嘩をした
【2.感情、気持ち】
1.自分はやはり能力がない
2.上司に嫌われたかも・・・
3.彼女は自分のことを何もわかってくれない
【3.気づき、意見】
1.自分には能力がないのだろうか? どうやったらミスを防止できただろうか?
2.上司に怒られたけれど、最後は励ましてくれた
3.会社で嫌なことがあって、今日は自分にゆとりがなかった
【4.明日への改善】
1.次回同じミスをしないように改善策を考えよう
2.上司へ再度謝ると同時に改善策も伝えよう
3.彼女に昨日仕事をミスして落ち込んでいたことを話そう
日記を書く際のポイント
- 事実・出来事は、その日に「感情が大きく作用した出来事」を3つほどピックアップして書いてください。
- 日記を書く際は、事実から書いても感情から書いても構いません。人によっては感情から書いた方が書きやすいと思います。
- 気づき・意見は、第3者があなたにアドバイス(フィードバック)するような視点で書いてください。あなたを応援してくれそうな身近な人をイメージすると書きやすいです。
- 明日への改善は【3.気づき、意見】を見ながら、何か自分で改善できそうなことを少し前向きな気持ちで書いてください。書いた改善策を実際に行った場合は、その後の結果も書いておきます。もし、改善策が行えなかったとしても、必ず改善策だけは考えてください。
- 日記は最低でも3週間、毎日書き続けてください。
2 感情と認知のゆがみを照らし合わせる
3週間日記を書き続けると、合計63個の事実と感情、意見と改善策が書かれることになります。
【2.感情、気持ち】に書き出された内容をと「10個の認知の歪み」を照らし合わせます。
先の例では、下記のような認知の歪みになります。
例)
1.自分はやはり能力がない(マイナス化思考・拡大解釈と過小評価)
2.上司に嫌われたかも・・・(心の読み過ぎ)
3.彼女は自分のことを何もわかってくれない(全か無か思考・感情的決めつけ)
3 認知の歪みを自己理解する。
ワーク2で照らし合わせた認知の歪みのを数えます。
例)
マイナス化思考 10個
拡大解釈と過小評価 5個
心の読み過ぎ 6個
全か無か思考 6個
10個の認知のゆがみには、どれがいいとかわるいとかはありません。
ここで大事なことは、自分が歪んで見ている可能性があることに気づくことです。
4 チャレンジ・改善できたことを書き出す。
【4.明日への改善】に書き出した改善策のうち、実際にチャレンジできたこと、改善されたことを書き出します。
例)
1.同じミスをしないように改善策を考えた。その結果、手順を変え同じミスをしなくなった。
2.上司へ再度謝ると同時に改善策も伝えた。その結果、上司から「期待しているよ」と言われた。
3.仕事をミスして落ち込んでいたことを彼女に話した。その結果、その日は彼女もゆとりがなかったことがわかった。
5 日記を読み返し、新たな気持ちを再評価する
ご紹介した日記は、以下2つの目的に分かれています。
【1.事実・出来事】と【2.感情、気持ち】の目的は、自分の認知を知ること。
【3.気づき、意見】と【4.明日への改善】の目的は、新たな認知を作ること。
そして、新たな認知を育てるために、今までの日記を【事実】→【改善策】の順で読み返し、最後に【新たな気持ち】を書き出します。
例)
【事実】:仕事でミスをした
【改善策】:手順を変えミスをしなくなった
【新たな気持ち】:たとえミスをしたとしても、改善をすれば大丈夫
【事実】:彼女と喧嘩をした
【改善策】:素直な気持ちを話した
【新たな気持ち】:ゆとりがないときは素直な気持ちで話そう
新たな気持ちが実感できればできるほど、認知の歪みは自然と補正されていきます。
日記を3ヶ月間ほど続けると、認知の歪みの数が減っていくことを実感できると思います。
まとめ
あなたは、ゴミを捨てる時、燃えるゴミ・燃えないゴミ・缶・ペットボトルを分別して捨てると思います。
では、なぜゴミ捨てるときに分別をするのでしょうか?
それは、その後のごみ処理工程をスムーズに行うためです。
認知行動療法も、出来事・事実と感情・気持ち分別することで、認知の歪みに気づき補正することで、その後の人生をスムーズに生きられるようにします。
事実や出来事や過去や相手を変える事はできません。
しかし、自分の認知を変えることで感じ方は変わります。そして、自分の感じ方が変われば自分の考え方や言動も変わります。
その結果として、事実に対する意味や相手との関係性も変わっていきます。
事実や過去や相手を変えようとして悩むよりも、自分の認知を知り変えることの方が、結果的に悩みは解決され、気持ちも楽になれます。
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